2025年の本屋大賞は、阿部暁子さんの『カフネ』でした。弟を亡くした女性と、弟の元恋人が、家事代行の仕事を通して少しずつ近づいていく話です。
この年のノミネート10作は、『成瀬』の続編や、教室のスピーカーに死んだ同級生の声が宿る青春小説のように楽しく読めるものと、盗撮で逮捕された恋人を許すかどうかを問う話のように重いものが、ちょうど半々くらいで並んでいました。
10作を五十音順に、ネタバレなしで紹介します。書影やあらすじの一覧は本屋大賞ガイドの2025年ページにもあります。
2025年 本屋大賞ノミネート作品(五十音順)
1. 『アルプス席の母』 早見和真(小学館) ★2位
看護師をしながら一人息子を育ててきたシングルマザーが、野球の実力を見込まれた息子と一緒に、神奈川から大阪の新興校へついていく話です。スタンドから見守る母の側から高校野球を描いていて、きれいごとだけでは済まない親子の距離が書かれています。2位でした。
2. 『カフネ』 阿部暁子(講談社) ★大賞受賞
大賞作です。弟を突然亡くした41歳の薫子と、料理の得意なせつなが、家事代行サービス「カフネ」で一緒に働くうちに打ち解けていきます。豆乳そうめんやプリンなど、出てくる料理が本当においしそうで、感想でもまず料理の話をする人がほとんどでした。泣ける話が読みたいときに。
▶ 『カフネ』は、読んだ人の受け止め方やAudible版のナレーターの経歴を本屋大賞ガイドの作品ページにまとめています。
3. 『禁忌の子』 山口未桜(東京創元社) ★4位
救急に運ばれてきた身元不明の遺体が、担当した医師・武田と瓜二つだった。現役の医師でもある著者のデビュー作で、鮎川哲也賞を受けた医療ミステリです。感情を見せずに推理する相棒の医師・白崎がかっこいい、という声を多く見かけました。4位。
4. 『恋とか愛とかやさしさなら』 一穂ミチ(小学館) ★7位
恋人にプロポーズされた翌朝、その恋人が電車内の盗撮で捕まった、と知らせが入る。そこから「許す」とはどういうことかを考え続ける話です。一穂ミチさんらしく、どちらの側にも簡単に立たせてくれません。読む人によって意見が分かれそうな一冊で、7位でした。
5. 『小説』 野崎まど(講談社) ★3位
タイトルがそのまま『小説』。5歳で『走れメロス』を読んで本に取りつかれた少年と、図書室で出会った友人の、読書を通した長い友情の話です。「人はなぜ小説を読むのか」という問いに、最後まで読んだ人にだけ分かる答えが用意されています。3位。
6. 『死んだ山田と教室』 金子玲介(講談社) ★9位
夏休み直前に事故で亡くなったクラスの人気者・山田。2学期の始業式の日、教室のスピーカーから山田の声が聞こえてくる――という設定の青春小説です。高校の教室の、ばかばかしくて少し切ない空気がそのまま詰まっています。9位でした。
7. 『spring』 恩田陸(筑摩書房) ★6位
8歳でバレエに出会い、15歳で海を渡った舞踊家・萬春(よろず・はる)の成長を、周りの人たちの目から描く長編です。『蜜蜂と遠雷』でピアノを書いた恩田陸さんが、今度はバレエを書いています。文章から踊りが見えてくるような小説で、6位でした。
8. 『生殖記』 朝井リョウ(小学館) ★8位
語り手の「私」は、会社員・尚成の中に宿る「生殖本能」。人間の暮らしを、種の存続の目でくだけた口調で観察していきます。扱っているテーマは重いのに笑いながら読める、という感想が多い、朝井リョウさんらしい一冊です。8位。
9. 『成瀬は信じた道をいく』 宮島未奈(新潮社) ★10位
2024年の大賞『成瀬は天下を取りにいく』の続編です。周りの目を気にせず我が道を行く成瀬あかりは相変わらずで、読んでいるこちらまで少し背中を押されます。前作を読んでから手に取るのがおすすめ。10位でした。
10. 『人魚が逃げた』 青山美智子(PHP研究所) ★5位
「僕の人魚がいなくなってしまった」と話す王子を名乗る青年が、銀座の町に現れる。その週末、銀座を訪れた5人が、それぞれ人生の節目を迎える連作です。アンデルセンの『人魚姫』がところどころに出てきて、話どうしが少しずつつながっていきます。5位。
いまの気分で選ぶ、4つの入り口
- 心に静かな灯りをともし、じんわり泣きたい → 『カフネ』『人魚が逃げた』『アルプス席の母』
- 濃密な人間ドラマ、心の機微に浸りたい → 『恋とか愛とかやさしさなら』
- 現実を忘れて、圧倒的な熱量や世界観に溺れたい → 『spring』『小説』『死んだ山田と教室』
- 知的な刺激と、鋭い問題提起に触れたい → 『生殖記』『禁忌の子』
最後に
2025年の10作のうち、少なくとも9作はAudible版が出ています(2026年9月時点)。家事や通勤のあいだに聴けるので、長い作品から耳で試すのもひとつの方法です。
ほかの年の受賞作も見てみたいときは、2004年からの作品をまとめた本屋大賞ガイドをどうぞ。

ほかの年の本屋大賞
2004年からの大賞受賞作は本屋大賞の歴代受賞作まとめに一覧にしています。このブログで1年ずつ紹介している年は次のとおりです。


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