2026年の本屋大賞は、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』に決まりました。全国の書店員さんが「いちばん売りたい本」を投票で選ぶ賞で、ノミネートは10作です。
今年の10作を並べてみると、推し活をつくる側の話、文学賞に執着する作家の話、轢き逃げの罪を背負った女性の話と、読んでいて胸が痛くなる題材が多い年でした。一方で、殺し屋に営業トークで命乞いをする会社員の話や、恋心が「見えて」しまう探偵の連作のように、気軽に読めるものもちゃんと入っています。
ここでは10作を五十音順に、ネタバレなしで紹介します。書影やあらすじをまとめて見たいときは、本屋大賞ガイドの2026年ページも使ってください。
2026年 本屋大賞ノミネート作品(五十音順)
1. 『暁星』 湊かなえ(双葉社)
文部科学大臣で大御所作家でもある人物が、高校生の文化祭の式典中に刺殺される。逮捕された犯人は週刊誌に手記を書き始める――という始まりです。犯人の手記と、事件を小説にしようとする女性作家の語りが組み合わさっていて、どちらを先に読むかで見え方が変わります。5位。もともとAudible向けに書き下ろされた作品なので、耳で聴くのも向いています。
2. 『ありか』 瀬尾まいこ(水鈴社)
26歳のシングルマザー・美空が、5歳の娘を育てながら、仕送りを求めてくる実の母親との関係に苦しむ話です。そこに同性愛者の義弟が加わり、血のつながりとは別のところで家族の形が見えてきます。瀬尾まいこさんらしい、やさしいけれど甘くない一冊で、7位でした。
3. 『イン・ザ・メガチャーチ』 朝井リョウ(日経BP 日本経済新聞出版) ★大賞受賞
大賞作です。推し活に「のめり込む側」ではなく、人をのめり込ませる「仕掛ける側」から、ファンダムの商売を描いています。タイトルの「メガチャーチ」は、巨大教会が信者を集めるやり方に重ねたもの。物語が人を動かす力の、明るい面と怖い面の両方が書かれています。
▶ 『イン・ザ・メガチャーチ』は、読んだ人の受け止め方やAudible版のナレーターの経歴を本屋大賞ガイドの作品ページにまとめています。
4. 『失われた貌』 櫻田智也(新潮社)
山奥の崖下で見つかった、顔を潰された身元不明の遺体。捜査する刑事のもとに、「行方不明の父かもしれない」と小学生が訪ねてきます。主人公は天才型の名探偵ではなく、聞き込みを重ねるふつうの刑事で、派手さを抑えた正統派の警察小説です。櫻田智也さんの初めての長編で、9位でした。
5. 『エピクロスの処方箋』 夏川草介(水鈴社)
2024年4位『スピノザの診察室』の続編で、京都の地域病院で働く内科医・雄町哲郎が主人公です。大学病院を辞めるきっかけになった教授の、その父親を診ることになる、という因縁から話が動きます。前作を読んでいなくても入れる、という感想が多く見られました。4位。
6. 『殺し屋の営業術』 野宮有(講談社)
江戸川乱歩賞の受賞作です。訪問先で死体を見つけ、殺し屋に襲われた凄腕の営業マンが、「私を殺したら後悔しますよ」と自分を売り込み始める。この導入だけで読みたくなる人は多いはずです。6位。重い題材が多い今年の中では、いちばん勢いで読めます。
7. 『さよならジャバウォック』 伊坂幸太郎(双葉社)
夫の暴力に耐えてきた主婦が、とっさに夫を殺してしまう。そこへ大学時代の後輩が現れて「問題が起きていますよね」と言う――という始まりです。二つの語りが交互に進み、「ジャバウォック」とは何なのか分からないまま引っぱられていきます。伊坂幸太郎さんらしいユーモアもあり、10位でした。
8. 『熟柿(じゅくし)』 佐藤正午(KADOKAWA) ★2位
大雨の夜、妊娠中の香里は運転中に老婆をはねてしまいます。服役中に産んだ息子の親権を奪われ、会えないまま17年。息子を求めて流れていく女性の姿を追う長編で、2位でした。読んでいて苦しくなる場面も多いのですが、子どもを持つ人ほど重ねて読んでいる、という感想が目立ちます。
9. 『探偵小石は恋しない』 森バジル(小学館)
福岡の探偵事務所が舞台の連作ミステリです。探偵・小石には他人の恋心の矢印が見えてしまう体質があり、浮気調査ならほぼ百発百中。なのに本人は恋愛が大嫌い、というずれが楽しい作品です。軽い会話で読み進められて、最後にしっかり驚かされます。8位。
10. 『PRIZE―プライズ―』 村山由佳(文藝春秋) ★3位
本屋大賞も受賞している人気作家が、「どうしても直木賞が欲しい」と言ってしまうところから始まります。認められたいという気持ちは誰にでも分かるだけに、その執着に共感しつつ、少し怖くもなる。文芸の世界の内側を描いた長編で、3位でした。
いまの気分で選ぶ、3つの入り口
どれから読むか迷ったら、いまの気分で選ぶのがいちばん外れません。
- 現実を忘れて、物語の熱量に溺れたい → 『イン・ザ・メガチャーチ』『さよならジャバウォック』『殺し屋の営業術』
- 疲れた心を静かに満たしたい → 『ありか』『エピクロスの処方箋』『熟柿』
- 心地よい緊張感と謎解きに浸りたい → 『暁星』『失われた貌』『探偵小石は恋しない』『PRIZE―プライズ―』
ページをめくる、その手軽さ
今年の10作のうち、少なくとも9作はAudible版が出ています(2026年9月時点)。通勤や家事のあいだに聴けるので、気になった1冊から試してみてください。
次に何を読むか迷ったときは、2004年からの受賞作をまとめた本屋大賞ガイドも見てみてください。

ほかの年の本屋大賞
2004年からの大賞受賞作は本屋大賞の歴代受賞作まとめに一覧にしています。このブログで1年ずつ紹介している年は次のとおりです。


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