図書館のAIは何をしている?横浜・台湾・アメリカと各国の国立図書館【2026年】

図書館でAIが使われ始めています。とはいえ、本の文章を書くAIではありません。多くは、探している本にたどり着くまでを手伝う使い方です。

この記事では、日本の公共図書館、台湾、アメリカ、各国の国立図書館がAIで何をしているのかを、公表された資料からまとめました。図書館の新しいサービスが気になる人や、本探しをAIに手伝ってほしい人に向けた記事です。事例は2026年10月6日に資料で確かめました。

AIの話を読む前に、人がどう調べものをしてきたかを知っておくと、違いがよく見えます。小林昌樹さんの『調べる技術』は、国会図書館で長く調べもの相談を受けてきた著者が、そのコツを14の講義にまとめた本です。国会図書館の「次世代デジタルライブラリー」の使い方にも1講を割いています。

『調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』の表紙

調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス

小林昌樹(皓星社、2022年)

横浜市立図書館では、AIと話しながら本を探せた

言葉を広げて探す「蔵書探索AI」

横浜市立図書館は、2024年1月15日に「蔵書探索AI」を入れました。青山学院大学と富士通Japanが共同で作ったもので、公共図書館にAIを実装したのは全国で初めてとされています。

入力した言葉をAIが広げたり推し量ったりして、関わりの深そうな本を出します。書名や著者名がはっきりしないときに、ふだんの言葉で探せるのが特長です。

弱い点も報告されています。横浜市の図書館職員が書いた報告には、著者名を正しく入れてもその著者の本が上位に出てこない、という指摘がありました。探す本がはっきり決まっているなら、これまでの検索のほうが早い場面もありそうです。

同じ仕組みは、2025年7月1日から青山学院大学の図書館でも動いています。大学図書館への導入も、これが全国で初めてだそうです。

声で話すと、AIが検索の言葉を出してくれる

2025年12月16日から2026年3月31日までは、「AIとお話ししながら本をさがす」という実証実験も行われました。SHANRI株式会社との取り組みです。

利用者はスマホやパソコンで特設サイトを開き、探したい本や今の気分を声で話します。AIはそのぼんやりした関心を、検索用のキーワードにまとめます。実際に本を探すのは、そのキーワードを受け取った図書館の検索システムです。

市の発表では、AIはあくまで補助で、検索や蔵書の判定には関わらないとされています。本の文章を作ることも、利用者のデータをAIの学習に使うこともないそうです。

実験のあとの報告では、読書のきっかけが特にない人でも、話すうちに関心がはっきりしてきたとまとめられています。その一方で、生成AIそのものに不安を持つ人もいました。利用者数などの数字は載っていません。

横浜市ではほかに、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の絵本推薦システム「ぴたりえ」も試しています。

台湾は、図書館で生成AIを使えるようにする

「館館有AI」— 図書館の利用証で生成AIを使う

台湾の教育部(日本の文部科学省にあたる役所)は、「館館有AI」という計画を進めています。「どの図書館にもAIを」という意味です。2026年5月の報道によると、2026年の第4四半期に国家図書館などで試験的に始め、その後47の大学に広げる予定です。

利用者は図書館の利用証で認証し、GPTやClaudeといった生成AIを無料で使えます。横浜の例が「本を探すためのAI」だったのに対し、こちらは図書館で生成AIそのものを使えるようにする形です。

所蔵資料から物語を作る展示

台中にある国立公共資訊図書館は、2026年2月に「數位共創境 PLUS Space」という展示スペースを開きました。図書館のデジタル資料を素材にして、生成AIといっしょに物語や絵を作れる体験型の展示です。同館は2023年から、AI司書やAIによる本の推薦にも取り組んでいます。

アメリカでは、高齢の人がAIを使って読書会をしている

マサチューセッツ州のコトゥイット図書館は、高齢の人に向けて、AIを使う読書会を開いています。アメリカ図書館協会(ALA)のサイト「Programming Librarian」が、2026年5月に紹介しました。

まず進行役が、話し合いになりそうな本を選びます。参加者はその本を読み、内容について生成AIに投げかける質問を自分たちで作ります。AIが返した答えを、みんなで評価して話し合う流れです。

ねらいは、高齢の人がデジタルの道具に慣れることです。AIの答えを正解として受け取らず、話し合いの材料にしているところに、この読書会らしさがあります。

各国の国立図書館は、裏方の仕事にAIを使う

国の図書館では、利用者に見えるサービスより、資料の整理や探しやすさのためにAIを使う例が目立ちます。国立国会図書館の「カレントアウェアネス」(2025年12月)がまとめた事例から、いくつかを表にしました。

図書館AIの使い方
米国議会図書館(LC)「データ・モデル・人」を軸にAI導入の枠組みを作り、デジタル資料の分類に機械学習を試している
フランス国立図書館(BnF)電子図書館Gallicaで、画像を自動で見分けて分類するしくみを開発。2021〜2026年のAIロードマップと5つの倫理原則を定めた
ドイツ国立図書館(DNB)本の主題を表す「件名」を、機械学習で付ける作業を業務に取り入れている
オランダ国立図書館(KB)ChatGPTをもとに、古い資料を解説するチャットボットを作った
ノルウェー国立図書館ノルウェー語の大規模言語モデルを作るためにデータを提供。新聞のデジタル化では、第一面を見分けるモデルも作った
韓国国立中央図書館文献の要約・翻訳サービスや、法律のリアルタイム翻訳サービスを開発

カナダ国立図書館・公文書館(LAC)は、2025年11月に「AI is here and LAC is ready」という声明を出しました。透明性、公平性、人が必ず関わること、信頼の4つを原則にしています。ドイツ、オーストリア、スコットランド、オーストラリアの国立図書館も、似た方針を公表しています。

AIは探すのを手伝い、本を選ぶのは人

ここまでの例を並べると、図書館のAIは答えを出すより、探す手前を手伝う側で使われています。横浜のAIが出すのは検索の言葉だけで、本を選ぶのは利用者です。コトゥイットの読書会でも、AIの答えは話し合いのたたき台でした。

どの館も「AIに何をさせないか」を書いているのも共通しています。横浜は利用者のデータを学習に使わないと明記し、カナダは人が関わることを原則に入れました。

AIの検索には、まだ苦手なこともあります。著者名を入れても目当ての本が上位に来ない、という横浜の報告がその例です。調べものの仕上げには、司書への相談や、自分で確かめる手間が残ります。

次に読むなら

図書館や博物館が、古い本や手書きの文書をAIで読めるようにしている話は、AIで古い本と手書きの文書を読むにまとめました。国立国会図書館のデジタルコレクションは、家からでも本文を検索できます。気になる言葉を一つ入れて、明治や大正の本を探してみてください。

参考にした資料

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