本屋大賞は、全国の書店員が「いちばん売りたい本」を投票で選ぶ賞です。一方の直木賞と芥川賞は、作家たちが選考委員になって選びます。選ぶ人も、見ているところも違う賞です。
その両方に選ばれた作品が、本屋大賞の2004年から2026年までの受賞・ノミネート240作の中に12作あります。直木賞が9作、芥川賞が3作です。なかでも本屋大賞の大賞と直木賞の両方を取ったのは、『蜜蜂と遠雷』だけです。
| 作品 | 本屋大賞 | もう一つの賞 |
|---|---|---|
| 『蜜蜂と遠雷』 | 2017年 大賞 | 直木賞 第156回 |
| 『黒牢城』 | 2022年 9位 | 直木賞 第166回 |
| 『熱源』 | 2020年 5位 | 直木賞 第162回 |
| 『流』 | 2016年 8位 | 直木賞 第153回 |
| 『サラバ!』 | 2015年 2位 | 直木賞 第152回 |
| 『悼む人』 | 2009年 8位 | 直木賞 第140回 |
| 『私の男』 | 2008年 9位 | 直木賞 第138回 |
| 『容疑者Xの献身』 | 2006年 4位 | 直木賞 第134回 |
| 『対岸の彼女』 | 2005年 6位 | 直木賞 第132回 |
| 『火花』 | 2016年 10位 | 芥川賞 第153回 |
| 『コンビニ人間』 | 2017年 9位 | 芥川賞 第155回 |
| 『推し、燃ゆ』 | 2021年 9位 | 芥川賞 第164回 |
書店員が「売りたい」と思い、作家が「うまい」と認めた作品、と言い換えてもいいかもしれません。それぞれの作品について、読んだ人の感想でよく出てくる話を短くまとめました。
直木賞も取った9作
直木賞は、エンターテインメント作品の単行本から選ばれる賞です。本屋大賞と重なるのも、自然とこちらが多くなります。
蜜蜂と遠雷(恩田陸)
国際ピアノコンクールに挑む4人のピアニストの話です。文庫で上下巻あわせて950ページ近くあり、感想は分量の話から始まる人がとても多い作品でした。それでも、演奏の場面から音が聞こえてくるようだった、ページをめくる手が止まらなかった、という声がそれを上回っています。
感想のまとめ:『蜜蜂と遠雷』の読者の受け止め方
黒牢城(米澤穂信)
織田信長に背いて城に立てこもった荒木村重が、城の中で起きる事件の謎を、牢に閉じこめた黒田官兵衛に解かせる話です。時代小説の形をした本格ミステリーで、時代ものに慣れていなくても読み進めるうちに引きこまれた、という感想が中心でした。
感想のまとめ:『黒牢城』の読者の受け止め方
熱源(川越宗一)
樺太で生まれたアイヌの男と、流刑になったポーランド人の男。別々に始まった2人の人生が、明治から戦後にかけてつながっていく歴史小説です。実在の人物をもとにした話の重さと、420ページほどの長さを越えて夢中になった、という声がありました。
感想のまとめ:『熱源』の読者の受け止め方
流(東山彰良)
1975年の台北で、17歳の主人公が、殺された祖父の謎を追って台湾から大陸へと向かう話です。祖父殺しのミステリーを軸にしながら、中身は青春小説だ、と紹介されていました。同じ第153回の芥川賞は、下で紹介する『火花』です。
感想のまとめ:『流』の読者の受け止め方
サラバ!(西加奈子)
イランで生まれた歩が、エジプト、大阪と住む場所を変えながら、破天荒な姉や家族に振り回されて育っていく長い話です。周りに合わせてばかりの歩に自分を重ねた、という感想がありました。
感想のまとめ:『サラバ!』の読者の受け止め方
悼む人(天童荒太)
人が亡くなった場所を訪ね、その人が誰に愛され、誰を愛したかを聞いて「悼む」旅を続ける青年・静人の話です。静人の周りの人たちが、彼に出会って少しずつ変わっていきます。死を正面から扱う作品なので、気持ちに余裕のあるときに向いています。
感想のまとめ:『悼む人』の読者の受け止め方
私の男(桜庭一樹)
震災で孤児になった10歳の花を、若い淳悟が引き取るところから始まる父と娘の話です。章を追うごとに時間をさかのぼっていく作りで、2人を結ぶものの正体が少しずつ見えてきます。重い内容を含むので、読む人を選ぶ作品です。
感想のまとめ:『私の男』の読者の受け止め方
容疑者Xの献身(東野圭吾)
天才数学者の高校教師・石神が、隣に住む母娘の罪を隠そうとし、物理学者の湯川がそれに挑みます。犯人が最初から分かっている作りなのに、2人の頭脳戦と石神の孤独に強く心を動かされた、という感想が多い作品です。
感想のまとめ:『容疑者Xの献身』の読者の受け止め方
対岸の彼女(角田光代)
専業主婦の小夜子と、彼女を雇った会社の社長・葵。子どもがいるかいないか、それだけでなぜ女同士は分かり合えなくなるのか、という問いから始まる話です。現在の小夜子の話と、高校生だったころの葵の話が交互に進みます。
感想のまとめ:『対岸の彼女』の読者の受け止め方
芥川賞も取った3作
芥川賞は、新人の純文学から選ばれる賞です。3作とも本の厚さは薄めで、一晩で読めるものが多くなります。
火花(又吉直樹)
売れない芸人の徳永が、誰にも媚びない先輩芸人の神谷に惚れこみ、師匠と慕う話です。お笑いの話でありながら、才能や生き方に全力で向き合ったことのある人ほど心に残る、と紹介されていました。
感想のまとめ:『火花』の読者の受け止め方
コンビニ人間(村田沙耶香)
コンビニのアルバイトを18年続ける36歳の恵子が、「普通」を押しつけてくる周りの人たちと向き合う話です。純文学なのに2時間ほどで読める平易さだ、という紹介がありました。読みやすいのに、読み終えたあとに「普通とは何か」が頭に残ります。
感想のまとめ:『コンビニ人間』の読者の受け止め方
推し、燃ゆ(宇佐見りん)
高校生のあかりが、アイドルの「推し」がファンを殴って炎上したあとも、彼を支え続けようとする話です。家でも学校でもうまくいかない彼女にとって、推しがどれほど大きな支えなのかが描かれています。アイドルファンの話というより、生きづらさを抱えた人が見ている世界そのものの話、と受け取られていました。
感想のまとめ:『推し、燃ゆ』の読者の受け止め方
どれから読むか
まず1冊なら、両方の賞でいちばん高い評価を受けた『蜜蜂と遠雷』です。長さが気になるなら、2時間ほどで読める『コンビニ人間』から入るのもいいと思います。ミステリーが好きなら『黒牢城』か『容疑者Xの献身』、歴史ものなら『熱源』が向いています。
直木賞と芥川賞の受賞作は、それぞれ第1回から最新の回まで一覧にしています(直木賞の歴代受賞作・芥川賞の歴代受賞作)。Kindle版のある作品も、そこから探せます。泣ける作品を探しているなら、本屋大賞の泣ける小説10冊もどうぞ。

コメント