本屋大賞の受賞作やノミネート作には、「泣いた」と語られる作品がいくつもあります。ただ、泣き方は作品ごとにかなり違います。胸が苦しくなって泣くものもあれば、救われてほっとして泣くもの、笑っているうちに泣けてくるものもあります。
この記事では、本屋大賞ガイドで作品ごとに集めた読者の感想のうち、「泣いた」「涙が止まらなかった」という声が出ていた10冊を、涙の種類で分けて紹介します。なかでも感想に「泣いた」という言葉がよく出てくるのが、2023年の大賞『汝、星のごとく』です。
| 作品 | 本屋大賞 | 涙の種類 |
|---|---|---|
| 『汝、星のごとく』 | 2023年 大賞 | 切なさ |
| 『君の膵臓をたべたい』 | 2016年 2位 | 切なさ |
| 『52ヘルツのクジラたち』 | 2021年 大賞 | 救い |
| 『カフネ』 | 2025年 大賞 | 救い |
| 『ひと』 | 2019年 2位 | 人のあたたかさ |
| 『さざなみのよる』 | 2019年 6位 | 人のあたたかさ |
| 『陰日向に咲く』 | 2007年 8位 | 人のあたたかさ |
| 『店長がバカすぎて』 | 2020年 9位 | 笑いながら |
| 『コーヒーが冷めないうちに』 | 2017年 10位 | 笑いながら |
| 『戦場のコックたち』 | 2016年 7位 | 思いがけず |
泣けるかどうかは、読む人やそのときの気分でも変わります。それぞれの作品について、どんなところで泣いたと語られているのかを書いておくので、いまの自分に合いそうなものを選んでみてください。
切なさで泣く
汝、星のごとく(凪良ゆう)
瀬戸内の島で出会った暁海と櫂の、17年にわたる話です。読書メーターの感想でよく出てくる言葉は「泣いた」「苦しい」「切ない」で、「終始つらかった。でも星5つ」という感想が典型でした。つらさと高い評価が同じところにある作品です。
恋愛小説として紹介されますが、親を支えなければならない二人が自分の人生を生きようとする、家族の話でもあります。読み終えると冒頭に戻りたくなる、という構成の話もよく出ます。気持ちに余裕のあるときに開くのがいいと思います。
感想のまとめ:『汝、星のごとく』の読者の受け止め方
君の膵臓をたべたい(住野よる)
高校生の「僕」が病院で拾った日記から、クラスメイトの桜良が重い病気を抱えていることを知る話です。「泣ける」という評判が先に立つ作品で、読み終えて素直に泣いた、という感想が出ています。
序盤の会話や冗談が回りくどく感じる、という正直な声もありました。一方で、後半に入ると構成に引き込まれた、という人が多い作品です。
感想のまとめ:『君の膵臓をたべたい』の読者の受け止め方
救われて泣く
52ヘルツのクジラたち(町田そのこ)
家族に人生を奪われてきた貴瑚と、母親に声を奪われた少年が出会う話です。題材が重く、「ずっと手が伸びなかった」と前置きする人がとても多い本でした。そのうえで、読んでみたら救いのある話だった、と着地する感想がいちばん多く見られました。
貴瑚の過去の側に、泣いたと語られる場面があります。とくに「アンさん」という人物の描き方に泣いた、と言う人が何人もいました。
感想のまとめ:『52ヘルツのクジラたち』の読者の受け止め方
カフネ(阿部暁子)
弟を亡くした薫子と、弟の元恋人で料理の得意なせつなが、家事代行の仕事を通して少しずつ近づいていく話です。感想の多くは、料理がおいしそうだという話から始まります。そのうえで「泣ける」という声が続きます。
出版社のポッドキャストでは「ノミネート作の中で唯一泣けた本」と紹介されていました。同じ場で「泣ける=いい小説というわけではない」とも話していて、泣けるかどうかより、素直に人の心をつかむ話だと受け取られています。
感想のまとめ:『カフネ』の読者の受け止め方
人のあたたかさで泣く
ひと(小野寺史宜)
両親を亡くして大学をやめた二十歳の聖輔が、商店街の惣菜屋で働きはじめる話です。「たったひとりになった。でも、ひとりじゃなかった」という受け止め方が多く、人によっては最後に泣く、という言い方がよくされていました。コロッケが食べたくなる小説としても知られています。
感想のまとめ:『ひと』の読者の受け止め方
さざなみのよる(木皿泉)
43歳で亡くなった小国ナスミのことを、彼女と関わった人たちの側から描いた14の短い話です。途中から涙が止まらなくなった、という感想がありました。
一方で、泣かせるだけの話ではない、と強調する人も何人もいました。涙のなかに笑いがあって、読み進めるうちに温かさのほうへ話が動いていく作品です。
感想のまとめ:『さざなみのよる』の読者の受け止め方
陰日向に咲く(劇団ひとり)
世間の陰で生きる人たちの話が同時に進んでいく連作です。孤独な老女が書いた最後の手紙の場面で号泣した、という紹介がありました。ばらばらに見える人物たちが、同じ世界の片隅で同じように苦しみながら生きている、と気づかせる構成です。
感想のまとめ:『陰日向に咲く』の読者の受け止め方
笑いながら泣く
店長がバカすぎて(早見和真)
書店で働く契約社員の京子が、ずれた店長や取引先に振り回される連作です。書店の「あるある」に笑いながら読み進めるうちに、胸が熱くなる場面が挟まります。商店街のカラオケ大会の場面では、笑いながら泣きそうになった、という感想がありました。
感想のまとめ:『店長がバカすぎて』の読者の受け止め方
コーヒーが冷めないうちに(川口俊和)
過去に戻れるという噂のある喫茶店で、後悔を抱えた人たちが大切な人に会いに行く話です。過去に戻っても現実は変えられない、というルールがあるからこそ、それでも伝えたい言葉が際立ちます。
帯には「四回泣ける」とあるそうですが、涙まではいかず、じんわり温まったという人もいました。泣けるという評判を期待しすぎずに読むのがよさそうです。
感想のまとめ:『コーヒーが冷めないうちに』の読者の受け止め方
思いがけず泣く
戦場のコックたち(深緑野分)
第二次世界大戦のヨーロッパ戦線で、コック兵のティムと仲間たちが戦場の小さな謎を解いていくミステリです。泣ける本として紹介されることは少ない作品です。しかし、謎解きが進むにつれて話は深刻さを増していき、終盤は友情の厚さに泣きながら読んだ、という感想がありました。
感想のまとめ:『戦場のコックたち』の読者の受け止め方
どれから読むか
思いきり泣きたいなら『汝、星のごとく』か『52ヘルツのクジラたち』です。ただ、どちらも重い題材を含むので、疲れているときは『ひと』や『カフネ』のように、あたたかさのほうが勝つ作品から入るのをおすすめします。
重いのは苦手だけれど少し泣きたい、というときは『店長がバカすぎて』が向いています。『汝、星のごとく』『52ヘルツのクジラたち』『カフネ』の3冊は、Audible版もあります(本屋大賞の受賞作をAudibleで聴く記事)。
ほかの年の受賞作は、本屋大賞の歴代受賞作まとめから探せます。


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