2021年本屋大賞:孤独と救いの物語。

2021年本屋大賞 2021年本屋大賞

2021年の本屋大賞は、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』でした。ほかのクジラには聞こえない高さで鳴く「52ヘルツのクジラ」に自分を重ねた人たちの話で、2024年には映画にもなっています。

この年のノミネート作には、推しのアイドルが炎上した高校生の話、あと1か月で地球が滅びる世界の話、高校生だけが使えるマッチングアプリの話など、そのときの空気を映した設定のものが目立ちました。そのぶん、いま読むと当時を思い出す楽しみもあります。

10作を五十音順に、ネタバレなしで紹介します。書影とあらすじの一覧は本屋大賞ガイドの2021年ページにあります。

2021年 本屋大賞ノミネート作品(五十音順)

1. 『犬がいた季節』 伊吹有喜(双葉社) ★3位

ある高校に迷い込んだ白い犬を、生徒たちが話し合って飼うことに決める。そこから昭和の終わりから平成にかけて、入れ替わっていく生徒たちと、ずっと校内にいる犬を描いた連作です。自分の高校時代を思い出しながら読む人が多い作品で、3位でした。

『犬がいた季節』の表紙

犬がいた季節

伊吹有喜

2. 『お探し物は図書室まで』 青山美智子(ポプラ社) ★2位

町のコミュニティハウスの図書室に、仕事や育児に悩む人がやって来ます。司書の小町さんは、頼まれた本と一緒に、ちょっと意外な本と手作りの羊毛フェルトを渡してくれる。その1冊が背中を押す連作で、青山美智子さんの名前が広く知られるきっかけになりました。2位。

『お探し物は図書室まで』の表紙

お探し物は図書室まで

青山美智子

3. 『オルタネート』 加藤シゲアキ(新潮社) ★8位

高校生だけが使えるマッチングアプリ「オルタネート」を軸に、調理部の部長、アプリを信じる女の子、高校を中退した男の子、3人の話が交互に進む青春群像劇です。加藤シゲアキさんの作品で、8位でした。

『オルタネート』の表紙

オルタネート

加藤シゲアキ

4. 『逆ソクラテス』 伊坂幸太郎(集英社) ★4位

小学生を主人公にした5つの短編集です。大人の決めつけや先入観に、子どもたちがあの手この手でひっくり返しにかかります。伊坂幸太郎さんらしい軽やかな会話で読めて、読み終えると少し胸がすっとします。4位。

『逆ソクラテス』の表紙

逆ソクラテス

伊坂幸太郎

5. 『52ヘルツのクジラたち』 町田そのこ(中央公論新社) ★大賞受賞

大賞作です。家族に人生を搾取されてきた貴瑚が、海辺の町で、母親から虐待を受けて声を出せなくなった少年と出会います。重そうでずっと手が伸びなかった、けれど読んでよかった、という感想がとても多い一冊です。

▶ 『52ヘルツのクジラたち』は、読んだ人の受け止め方やAudible版のナレーターの経歴を本屋大賞ガイドの作品ページにまとめています。

『52ヘルツのクジラたち』の表紙

52ヘルツのクジラたち

町田そのこ

6. 『この本を盗む者は』 深緑野分(KADOKAWA) ★10位

本の街に生まれた、本が大嫌いな少女・深冬。一族の書庫から本が盗まれると、街が物語の世界に変わってしまう呪いが発動します。本を取り戻すため、深冬は物語の中を駆け回ることになる。ファンタジーで、10位でした。

『この本を盗む者は』の表紙

この本を盗む者は

深緑野分

7. 『自転しながら公転する』 山本文緒(新潮社) ★5位

母の介護のため東京を離れ、茨城の実家に戻った32歳の都。アウトレットモールで働きながら、恋愛、仕事、親のことで揺れ続ける日々を描く長編です。30代で迷っている人ほど自分と重ねて読んでいる作品で、5位でした。

『自転しながら公転する』の表紙

自転しながら公転する

山本文緒

8. 『八月の銀の雪』 伊与原新(新潮社) ★6位

科学と人の暮らしを結びつけた5つの短編集です。表題作は、就職活動がうまくいかない大学生が、コンビニのベトナム人店員が地震の研究者の卵だと知る話。地球や生きものの話が、落ち込んだ人の気持ちをそっと持ち上げます。6位。

『八月の銀の雪』の表紙

八月の銀の雪

伊与原新

9. 『推し、燃ゆ』 宇佐見りん(河出書房新社) ★9位

高校生のあかりの「推し」のアイドルが、ファンを殴って炎上します。推しを推すことが生活の中心だったあかりの毎日が、少しずつ崩れていく。芥川賞の受賞作で、短いのでその日のうちに読み切れます。9位でした。

『推し、燃ゆ』の表紙

推し、燃ゆ

宇佐見りん

10. 『滅びの前のシャングリラ』 凪良ゆう(中央公論新社) ★7位

1か月後に小惑星が衝突して地球が滅びる、と発表された世界。いじめられている高校生、人を殺したヤクザ、恋人に裏切られた女性など、うまく生きられなかった人たちの最後の1か月を描きます。凪良ゆうさんの作品で、7位でした。

いまの気分で選ぶ、4つの入り口

  • 孤独な心に深く寄り添い、確かな救いを感じたい → 『52ヘルツのクジラたち』『滅びの前のシャングリラ』
  • 日常の疲れを癒やし、じんわりと元気を補給したい → 『お探し物は図書室まで』『犬がいた季節』『八月の銀の雪』
  • 瑞々しい青春のエネルギー、爽快感を味わいたい → 『逆ソクラテス』『オルタネート』
  • 現代のリアルな空気感や、物語の迷宮に浸りたい → 『推し、燃ゆ』『自転しながら公転する』『この本を盗む者は』

最後に

大賞の『52ヘルツのクジラたち』はAudible版もあり、10時間ほどで聴けます(2026年9月時点)。映画を観てから原作を読む、あるいは聴く、という順番もおすすめです。

ほかの年の受賞作やノミネート作は、本屋大賞ガイドにまとめています。

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ほかの年の本屋大賞

2004年からの大賞受賞作は本屋大賞の歴代受賞作まとめに一覧にしています。このブログで1年ずつ紹介している年は次のとおりです。

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