オーディオブックを聴くようになって、いちばん効いた道具はイヤホンでした。本そのものより、です。
私は仕事終わりの夜に散歩しながら聴いています。その使い方で分かったのは、オーディオブック用のイヤホンは、音楽を聴くときとは選ぶ基準が違うということでした。
先に断っておくと、私が実際に使っているのは1台だけです。他の機種は各社の公式サイトで仕様を確認して並べていますが、装着感や音の印象を体験として書くことはしません。そこは正直に分けて書きます。
本1冊は5時間から16時間ある
音楽なら1曲は数分です。オーディオブックは桁が違います。
本屋大賞の大賞受賞作をAudibleで聴いたときの再生時間を、実際に調べたものがこちらです(2026年9月14日時点)。
| 作品 | 再生時間 |
|---|---|
| 成瀬は天下を取りにいく(2024年) | 5時間4分 |
| 羊と鋼の森(2016年) | 7時間46分 |
| 告白(2009年) | 8時間20分 |
| カフネ(2025年) | 10時間31分 |
| 汝、星のごとく(2023年) | 12時間8分 |
| 同志少女よ、敵を撃て(2022年) | 15時間34分 |
| イン・ザ・メガチャーチ(2026年) | 15時間43分 |
| 鹿の王(2015年・全4巻) | 合計27時間23分 |
いちばん短い『成瀬は天下を取りにいく』で5時間、長いものは15時間を超えます。シリーズものだと27時間。1冊を最後まで聴くのに、映画10本ぶんくらいの時間を耳に入れることになります。
この「長さ」が、イヤホンの選び方を変えます。
だから効いてくるのは、この3つ
長時間、しかも外を歩きながら聴く。この前提だと、音質より先に来るものがあります。
1. 外の音が聞こえること
夜道を歩いていると、後ろから来る自転車や車に気づく必要があります。耳を塞ぐイヤホンだと、これが聞こえません。音量を上げれば本のほうは聞こえますが、そのぶん周りが分からなくなります。
ここは好みではなく安全の問題なので、外で聴くなら耳を塞がないタイプ一択だと思っています。
2. 長くつけていても疲れないこと
1回の散歩で30分から1時間。耳の穴に何かを押し込んだままだと、それ自体が疲れてきます。音楽を数曲聴くだけなら気にならない差が、毎日1時間となると効いてきます。
3. 充電を気にしなくていいこと
本1冊が10時間あると、途中で電池が切れる場面が出てきます。ただしこれは後述のとおり、思っているほど大きな差にはなりません。
耳を塞がないイヤホンには、3つの方式がある
ひとくちに「耳を塞がない」と言っても、構造が違うものが混ざっています。買う前にここを知っておくと迷いません。
- 骨伝導:こめかみのあたりに当てて、振動で音を伝えます。左右がつながったネックバンド型が主流。スポーツ向けの製品が多い
- イヤーカフ型:耳たぶを挟んで引っかけます。耳の穴は空いたまま。2026年現在、耳を塞がないイヤホンの主流はここです
- リング型・耳掛け型:耳に掛ける、あるいは穴の空いた形状で、耳の穴を完全には塞ぎません
私が選んだのはイヤーカフ型です。耳の穴を塞がないので外の音がそのまま聞こえること、そして耳が塞がれないぶん疲れが軽いこと。この2つで選びました。骨伝導とリング型は実際に試していないので、方式どうしの優劣は書けません。ここから先は仕様を並べるだけにします。
私が使っているのは、これです
Anker の Soundcore C50i というイヤーカフ型です。
夜の散歩と、家事のときに使っています。良かったところは2つです。
外の音がそのまま聞こえます。後ろから自転車が来れば分かるし、家事のときは水の音も家族の声も聞こえます。「聴きながら、普通に生活できる」という感覚が、想像していたより快適でした。
耳が疲れません。公式の仕様で片耳約5.5gと軽く、つけっぱなしでも、耳を塞ぐタイプのような疲れが出ません。毎日1時間ずつ使うものとして、ここは効きます。
防水防塵はIP55(Anker公式の仕様)。今回並べた中でいちばん高い等級です。
【注意】「最大28時間再生」は、そのままの意味ではありません
ここは私も危うく勘違いするところでした。
通販サイトの商品名には「最大28時間再生」と書かれています。ところがAnker公式の製品ページを見ると「イヤホン本体のみで最大7時間、ケースと合わせて使用すると最大28時間」とあります。28時間というのは、ケースで継ぎ足しながら使った場合の合計です。
つまり1回の充電でもつのは7時間。先ほどの表と突き合わせると、『カフネ』の10時間31分は1回の充電では聴き切れません。
ただし、これを大げさに受け取らないでください。散歩1回は30分から1時間です。その使い方なら7時間はむしろ余ります。家に帰ってケースに戻せば充電されるので、実用上ほとんど困りません。「1冊を通しで聴けない」というのは、言われてみればそうというだけの話です。
大事なのは、この事情はどの製品でも似たようなものだということです。次の表を見てください。
主要モデルの仕様を並べました(各社公式・2026年9月時点)
繰り返しますが、私が実際に使ったのはC50iだけです。以下は各社が公表している数字を並べたもので、使い心地の評価ではありません。
| 製品 | 方式 | 本体のみ | ケース込み | 重さ | 防水防塵 |
|---|---|---|---|---|---|
| Anker Soundcore C50i | イヤーカフ型 | 最大7時間 | 最大28時間 | 約5.5g | IP55 |
| Shokz OpenDots 2 | イヤーカフ型 | 最大10時間 | 最大40時間 | 6.4g | IP57(ケースはIP54) |
| Bose Ultra Open Earbuds | イヤーカフ型 | 最大7.5時間 | +最大19.5時間 | 公式表記は0.01kg | IPX4 |
| Sony LinkBuds Open(WF-L910) | リング型 | 最大8時間 | 最大13時間 | 約5.1g | 防滴(等級の記載なし) |
| Shokz OpenRun Pro 2 | 骨伝導 | 最大12時間 | ケース無し(直接充電) | ネックバンド型 | IP55 |
製品名はそれぞれの商品ページへのリンクにしてあります。ここから先は読者が自分で選ぶところなので、気になったものは仕様や写真を直接見てから決めてください。
表から言えることを3つ挙げます。
- 1回の充電でもつ時間は、どれも7〜12時間に収まります。本1冊ぶんを確実に聴き切れる製品は、この中だとほぼありません。C50iの「28時間」だけが突出して見えるのは、ケース込みの数字だからです
- 単体の持ち時間で言えば、C50iはむしろ短いほうです。私が使っているものを持ち上げたいところですが、数字は数字です
- ケース込みの合計では、C50iとOpenDots 2が長い。充電の回数を減らしたいなら、ここを見ることになります
Bose の重さは公式が「0.01 kg」というざっくりした表記で、他社の0.1g単位の表記とは精度が違います。同じ土俵で比べられないので、そのまま載せています。骨伝導のOpenRun Pro 2は左右がつながったネックバンド型なので、左右独立型と重さを並べても意味がありません。
こう選べばいいと思います
- 外を歩きながら聴くのが中心 → 耳を塞がないタイプなら方式はどれでもいい。安全は全部クリアします
- 眼鏡や帽子と一緒に使う → 構造で見てください。骨伝導はこめかみの周りとネックバンドで頭を挟む形、イヤーカフ型は耳たぶだけに留まる形です。(私は骨伝導を使っていないので、実際に干渉するかどうかは分かりません)
- 充電の回数を減らしたい → ケース込みの合計が長いものを。C50iかOpenDots 2
- 走る・ジムで使う → 汗に強い骨伝導か、防水等級の高いもの(IP55)
- とにかく軽いものがいい → 5g台のC50iかLinkBuds Open
向かないのは、電車の中です
耳を塞がない構造なので、音は周囲に少し漏れます。静かな車内で音量を上げるのは向きません。
通勤電車がオーディオブックのメイン時間になる人は、素直に耳を塞ぐタイプを選んだほうがいいです。耳を塞がないイヤホンは、外を歩くとき・家事をするときに特化した道具だと思ったほうが、期待を外しません。
私自身、電車の中では別のイヤホンを使っています。ノイズキャンセリング付きのAnker Soundcore Liberty 5です。電車では逆に、耳を塞いで周りの音を消してしまうほうが圧倒的に聴きやすい。1台で全部まかなおうとせず、2つを使い分けるのが結局いちばん落ち着きました。
こちらは公式の仕様で、通常モードなら本体だけで最大12時間、ノイズキャンセリングを使うと最大8時間です。ケース込みなら最大48時間。電車の往復ぶんには十分もちます。
あとは当然ですが、音楽をいい音で聴きたい人にも向きません。耳の穴を塞がない以上、低音は構造的に不利です。声を聴く道具だと割り切るなら、これで十分でした。
まとめ
オーディオブック用のイヤホンは、音質で選ぶものではありませんでした。外の音が聞こえること、長時間つけても疲れないこと。この2つが満たせていれば、あとは好みの範囲です。
「最大28時間」のような数字は、どこまでを含んだ数字なのかを確かめてから比べてください。私は危うく勘違いするところでした。
何を聴くかについては、本屋大賞の歴代まとめや本屋大賞ガイドにまとめてあります。耳で読む1冊目を探すなら、そのあたりから選ぶと外しにくいはずです。
肝心の聴くほうはAudibleの30日間無料体験から始められます。体験期間が終わると月額1,500円で自動更新されるので、続けないと決めたなら期間内に退会まで済ませておくと確実です。イヤホンだけ揃えても聴くものが無いと始まらないので、先にこちらを試して、自分が耳で本を読めるか確かめてからイヤホンを選ぶ、という順番でもいいと思います。Audible自体をどう使っているかはこちらの記事に書きました。プランを間違えて選んだ話も含めて、正直に書いてあります。

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